「赤ちゃんがおっぱいを嫌がり飲んでくれない」というお悩みは、産後によくある相談のひとつです。
おっぱいを拒否されると、まるで自分自身を否定されたような気持ちになってしまうかもしれません。でも赤ちゃんは1mmもそんなことは思っていないので、必要以上に落ち込まないでください。
赤ちゃんがおっぱいを嫌がる原因のひとつに、「乳頭混乱」があります。
[乳頭混乱とは]
乳頭混乱という言葉に、医学的に明確な定義はありません。
一般的には、母乳と哺乳瓶の両方を経験している赤ちゃんが、おっぱいまたは哺乳瓶のどちらか一方を嫌がったり、うまく飲めなくなったりする状態を指して使われることが多い言葉です。
この記事では、その中でも「赤ちゃんがおっぱいを拒否するケース」に焦点を当て、乳頭混乱の原因と対処法について解説します。
乳頭混乱は根気が必要ですが、治る可能性は十分にあります。
赤ちゃんがおっぱいを拒否する理由
おっぱいを嫌がっているように見えるとき、実際に何を感じているのかは赤ちゃん本人にしかわかりません。しかし、私が臨床で感じる「赤ちゃんがおっぱいを拒否する理由」は、大きく4つです。
理由1:おっぱい以前に、体勢が落ち着かない
まずはじめに確認したいのが、赤ちゃんの姿勢です。
- 首元の支え方が不安定
- 身体がねじれている
- 反っている
このような状態は赤ちゃんにとっては居心地が悪いので、おっぱい以前に「居心地の悪さ」に泣いている、ということは多々あります。そんな状態で無理やり口元におっぱいを入れられても、「今それどころじゃないから!」と余計に泣いてしまいます。
その様子が、親から見ると「おっぱいを嫌がっている」ように見えてしまいます。
理由2:うまくおっぱいに吸い付けない
赤ちゃんはおっぱいを飲むとき、突出した乳首だけをチューチュー吸っているわけではありません。乳房にパクリと大きな口で食いついて、舌を乳輪から乳頭全体に密着させて母乳を飲み取っています。このとき乳頭の先端は、赤ちゃんの「のどちんこ」あたりまで引き伸ばされます。
つまり、「乳頭の形」や「乳輪の伸展性」「乳房の柔らかさ」は、おっぱいを上手に飲めるかどうかに大きく関わるということ。
- 乳房全体が張って硬くなっている
- 乳輪がむくんでいる
- 乳頭が短い、扁平、陥没している
などで赤ちゃんがうまくおっぱいを口にフィットさせられないと、「おっぱいが見つからない!」と大泣きしてしまいます。
このとき赤ちゃんは乳首を探して、首を左右に何度も振るような仕草をします(なかなか見つけられないので、空腹も相まって激しく泣いていることも多いです)。それを見て「赤ちゃんがおっぱいを嫌がっている」と表現する人は多いのですが、実際には一生懸命おっぱいを探しているだけです。
関連記事:【母乳吸啜のメカニズム】
理由3:母乳量が少ない
哺乳瓶とおっぱいを併用しているときに、おっぱいを拒否するケースです。とくに、ミルクに比べて母乳量が少ない場合に起こりやすいと感じています。
赤ちゃんによっては「思っているように母乳が出てきません!」と不満を述べるように泣いたり、哺乳瓶ではごくごく飲むのにおっぱいだと数回口を動かしてすぐ寝てしまうことも。
そもそも哺乳瓶とおっぱいでは、赤ちゃんの飲み方が異なります。
混合栄養は「母乳とミルクのいいとこ取り」「無理のない授乳方法」と思われがちですが、2つの異なる飲み方をしなければならないという意味では、難易度の高い授乳方法といえます。

理由4:おっぱいの時間が「戦いの時間」になっている
おっぱいの時間は、赤ちゃんが栄養をとるだけでなく、親子が触れ合う時間にもなります。
しかしひとたび乳頭混乱を起こすと、親は焦り、なんとかおっぱいを吸ってもらおうと泣いている赤ちゃんを何度も何度もおっぱいに引き寄せます。赤ちゃんはうまく飲めなくて泣いているのに、鬼気迫った表情でおっぱいを吸うことを強要されると、やがて授乳のポジションを取るだけで大泣きするように。
いつしかおっぱいタイムは【飲ませたい親】と【飲めない赤ちゃん】の「戦いの時間」になり、お互いにとって苦痛な時間になっていきます。
キタガワ典型的な悪循環です。
できることからやってみよう!乳頭混乱が疑われるときの対処法
原因がわかれば、あとはコツコツ行動するだけ。「乳頭混乱は改善できる」と信じて、ひとつずつ対策をしていきましょう。
対策1:まずは赤ちゃんが心地よく抱かれる姿勢にしよう
赤ちゃんが姿勢の不安定さで泣いている場合は、無理におっぱいを口に入れようとせず、まずは赤ちゃんを抱っこしたときに口が自然と胸のあたりにくる姿勢に整えてあげます。
赤ちゃんの背中が自然でゆるやかなカーブになるよう優しく包み込むように抱くと、顔がちょうどおっぱいの高さにくるはずです。リラックスしていることを確認したら、そっと口元に乳房を近づけてみましょう。
対策2:乳房と乳輪を柔らかくしよう
乳頭や乳輪の形状が原因でおっぱいにうまく吸いつけない場合に試してほしいのが、乳輪部分のマッサージです。
[乳輪マッサージの方法]
- 親指と人差し指を乳輪の際に置く
- そのままの位置で、親指と人差し指の腹で乳輪をやさしく押し合わせるように圧迫する
- これを1秒に2回くらいの速さで繰り返し、片胸2分間行う
タイミングはいつでもいいので、1日1回は行うようにしてください。
なお、乳房や乳輪の硬さは自分では気づきにくいこともあります。赤ちゃんがおっぱいをうまくくわえられないときは、助産師に乳房や乳輪の状態を見てもらいましょう。必要に応じて乳房ケアやセルフケア指導を受けることができます。
対策3:定期的に搾乳しよう
母乳量不足が乳頭混乱の原因になっている場合は、母乳を増やすために定期的に搾乳をしていきます。理想は、赤ちゃんがミルクを飲むのと同じくらいの回数(新生児なら1日7回〜8回)搾乳すること。
ただし、搾乳は赤ちゃんのお世話をしながら続ける必要があるため、無理なく続けられる方法を選ぶことも大切です。短期的には手で搾乳する方法もありますが、定期的に搾乳するなら、できるだけ負担の少ない搾乳器を活用しましょう。
私が個人的におすすめする搾乳器は「メデラ」です。


色々なタイプがありますが、楽なのは両手が自由になるハンズフリーです。ハンズフリーなら胸に搾乳カップをつけるだけなので、搾乳中も行動が制限されません。


定期的に搾乳することで乳輪も少しずつ柔らかくなっていきます。搾乳は母乳を増やすためにも、乳輪を柔らかくするためにも、ぜひ積極的にやっていきましょう。
対策4:お互いのストレスを減らそう
泣いて嫌がる赤ちゃんにおっぱい練習を強要するのはやめましょう。
多少格闘しても2〜3分でおっぱいに吸い付きゴクゴク飲めるなら、おっぱいチャレンジする価値はあります。でも10分以上格闘して結局ほぼ飲めないなら、時間がもったいないです。1日に8回もそれを繰り返していたら、赤ちゃんにとっておっぱいが「嫌な時間」になってしまいます。
赤ちゃんにとって胸が「安心な場所」になるように、まずは肌と肌のふれあいを大切にします。胸にそっと優しく赤ちゃんを近づけてみて、もしぎゃーっと泣いたら、「はいはいオッケー。一旦おしまいね」とおっぱい練習を切り上げましょう。飲めなかったときは、必要な栄養をミルクや搾乳で補ってあげてください。



深追いしないことが大切です。
おっぱい練習をがんばってるのに毎回拒否されると、母親には相当なストレスがかかります。ストレスは母乳の分泌を抑制することもわかっています。母乳を増やす面からみても、無理なおっぱい練習は百害あって一利なし。
おっぱいの状態を整えることで、赤ちゃんがおっぱいを飲んでくれる確率は上がっていきます。焦る気持ちはとてもよくわかりますが、今はおっぱいの状態を整えることに集中しましょう。
赤ちゃんにやってもらうこと
おっぱいを整えている間に、赤ちゃんにも取り組んでもらいたいことがあります。
自分から大きな口を開けて食いつく
おっぱいを飲むとき、赤ちゃんは自分から大きな口を開けて食いつき、乳房を深く口に含んで飲むのが理想です。大きなハンバーガーにバクッと食いつくような感じです。
一方、哺乳瓶は赤ちゃんがあまり口を開けていなくても乳首を入れることができますし、おちょぼ口のままでも飲めてしまいます。この飲み方が定着すると、「自分からおっぱいに食いついてしっかり飲む」ことが難しくなってしまいます。哺乳瓶で飲むときも赤ちゃん自身に口を大きく開けてもらい、朝顔のように上下の唇が外側に開いた状態で飲むように意識してみてください。
哺乳瓶の傾け方を工夫する
重力でミルクがどんどん流れ込んでくるのを防ぎ、赤ちゃんが自分のペースで飲むことを促すのが「ペースドフィーディング」です。
赤ちゃんの上半身を少し起こし気味に抱いて、哺乳瓶は水平に近い角度にします。乳首の中にはミルクが入っている状態を保ちつつ、哺乳瓶を傾けすぎないことがポイントです。
関連記事:【ペースドフィーディングとは】
飲むのにパワーが必要な哺乳瓶を使う
ピジョンの「母乳相談室」という乳首は、他の商品に比べて飲むのに力が必要で、母乳を飲む練習に適しています。以前勤めていた産院でも、直接おっぱいを飲むのに苦労している子にはこの哺乳瓶を使っていました。
健康上問題がなく、食欲がありミルクをしっかり飲める子であれば、母乳相談室を使ってみるのもおすすめです。
前向きな気持ちでコツコツ続ける
赤ちゃんにおっぱいを拒否されると、焦ったり悲しくなったり、「もう断乳した方が楽なのかな…」と感じてしまうことはあると思います。
本当に断乳したいと思ったら、母乳量を徐々に減らして断乳することはできます。でも、もしまだ母乳育児を続けたい気持ちがあるなら、焦らず、一つひとつできることをコツコツ続けていきましょう。
「自分なりにやれることをやったけど、やっぱり無理、もうやめたい。」そう思ったら、そこで断乳を考えればいいかなと私は思います。断乳はいつでもできますが、止まった母乳を再開することはかなり難しいからです。
最後に、紹介した内容をおさらいしていきましょう。
[赤ちゃんがおっぱいを拒否する理由]
1:おっぱい以前に、体勢が落ち着かない
2:胸の張りや乳首の形状の問題で、うまくおっぱいに吸い付けない
3:母乳量が少ない
4:おっぱいの時間が「戦いの時間」になっている
[乳頭混乱が疑われるときの対処法]
1:赤ちゃんが心地よく抱かれる姿勢にする
2:乳房と乳輪を柔らかくする
3:定期的に搾乳する
4:無理強いをやめ、肌と肌のふれあいを取り入れる
5:赤ちゃんには口を大きく開けて自分から飲む練習をしてもらう
自分だけでなんとかしようと思うと、「これで本当にやり方あってる?」と不安になることもあると思います。乳頭混乱を改善するためには、やるべきことをコツコツ続けることが大切です。不安で心が折れそうなときは、ぜひソラチ助産院に相談してください。
1ヶ月間継続してサポートするプランもご用意しています。


このサイトは、育児に関する情報発信を継続するため、任意のご支援(おふせ)で運営しています。すべての記事は無料でご覧いただけます。役に立ったと感じた場合に、ご支援いただけると励みになります。
OFUSEで応援を送る