「おっぱい」と「哺乳瓶」には違いがある
「おっぱいだとすぐ寝ちゃうのに、哺乳瓶はゴクゴク飲む」
「いざというときのためにミルクも飲んでほしいのに、哺乳瓶を拒否された」
これは「混合あるある」で、実際に助産院でもよく相談されるお悩みです。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
それは、おっぱいと哺乳瓶には違いがあるからです。
違いは、大きく分けて2つです。
- 乳の出方の違い
- 口の中の感触の違い
この記事では、それぞれの違いについて詳しく解説していきます。
違い①:乳の出方の違い
おっぱいと哺乳瓶のいちばんの違いは、「乳の出方」です。
哺乳瓶は、基本的に口を動かすごとにミルクが出ます。
対しておっぱいは、はじめはあまり出てきません。
それでも吸い続けていると、あるタイミングで母乳がシャワーのように勢いよく出始めます。(これを射乳反射「しゃにゅうはんしゃ」といいます。)
1分半〜2分で勢いはかなり落ち着きますが、さらに吸い続けていると、また次の射乳が起こります。
つまりおっぱいは「出たり、ゆるやかになったりを繰り返すもの」です。
哺乳瓶 = 吸うと出る
おっぱい = 波がある
ここでは母乳の出方を簡略化していますが、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
赤ちゃんがどのように母乳を飲みとっているかをホルモンや吸啜の仕組みから詳しく解説しています。
▶︎関連記事:【母乳吸啜のメカニズム】
違い②:口の中の感触の違い
おっぱいと哺乳瓶では、「感触」にも違いが見られます。
おっぱいは乳輪まで深く含んで飲みます。
正しく吸着できている場合、乳首の先端はのどの奥(のどちんこの近く)まで引き込まれています。
また、おっぱいは柔らかい組織でできており、授乳中は赤ちゃんの口の中で柔軟に形を変えています。
超音波で授乳中の口内を観察した研究では、乳頭・乳輪は吸啜に伴って、元の長さの約2倍前後にまで伸びるという報告があります。※1
一方、哺乳瓶の乳首も変形はしますが、素材や形状はあらかじめ決まっており、報告されている伸展量は1.2倍程度にとどまります。※1
つまり赤ちゃんからすると、おっぱいと哺乳瓶では、口の中に入ってくるものの形や柔らかさ、触れ方が同じではないのです。
そして赤ちゃんは、私たちが思っている以上に口の感覚に敏感です。
実際の授乳では、
- 左のおっぱいは飲むのに右は嫌がる
- 胸が張ると飲みたがらない
- 哺乳瓶の乳首を変えたら飲まなくなった
といったこともめずらしくありません。
助産院で赤ちゃんたちを見ていると、「そんなところまで分かるの?」と思わされることがよくあります。
違いにどう反応するかは、赤ちゃんによる
ここまで読むと、「じゃあ混合は無理ってこと?」と思うかもしれません。でも、必ずしもそうとは限りません。
なぜなら、赤ちゃんにはそれぞれ個性があるからです。
おっぱいと哺乳瓶どちらが来てもすんなり受け入れる子もいれば、少々文句を言いつつ飲む子もいます。中には「こっちは嫌!」とはっきり意思表示する子もいます。
そして、一度拒否したとしても、少し期間をおいて試したら普通に飲んだ、ということもあります。
おっぱいと哺乳瓶には違いがありますが、それを気にするかどうかは赤ちゃん次第。
いままでたくさんの子を見てきましたが、事前に反応を予測することは困難です。
やってみないとわからない、というのが正直なところです。
違いを知ることが出発点
ここまで解説した通り、おっぱいと哺乳瓶には、乳の出方や口の中での感触など、はっきりした違いがあります。
だからこそ、「哺乳瓶は飲むのにおっぱいを嫌がる」「昨日まで寝る前だけミルクを飲んでいたのに急に飲まなくなった」といったことが起きても、不思議ではありません。
こうした違いは、「乳頭混乱」を理解する上でも大切な前提になります。
乳頭混乱の原因や対処法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶︎関連記事:【乳頭混乱とは?原因と対処法】
参考文献
※1水野克己『よくわかる母乳育児 改訂第3版』へるす出版、2023年
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