母乳育児を順調に進めていくためには、産後早期からの授乳や搾乳がとても重要です。
その中心で働いているのが、「プロラクチン」というホルモンです。
この記事ではプロラクチンと母乳の関係について、生理学の視点からわかりやすく解説します。また、産後早期に授乳刺激が大切とされる理由についても、このホルモンの働きから見ていきましょう。
プロラクチンとは
プロラクチンは脳の下垂体前葉から分泌されるホルモンで、乳腺に働きかけて母乳を作る働きがあります。
出産後の泌乳開始だけでなく、その後の母乳分泌維持にも重要な役割を担っています。
プロラクチンは、母乳分泌に欠かすことのできないホルモン
授乳刺激でプロラクチンが分泌される
赤ちゃんがおっぱいを吸うと、その刺激が神経を通って脳に伝わります。
するとプロラクチンが分泌され、乳腺に「母乳を作れ」という指令が送られます。
赤ちゃんがおっぱいを吸う、または乳頭への刺激
↓
脳(下垂体前葉)
↓
プロラクチン分泌
↓
乳腺で母乳が作られる
血中プロラクチン濃度のベース値は徐々に下がっていく
血中プロラクチン濃度は出産直後が最も高く、時間が経つにつれて下がっていきます。

(『よくわかる母乳育児 改訂第3版』p.36を参考に筆者作成)
もし全く授乳しない場合、血中プロラクチン濃度は急激に低下し、おおむね1週間程度で非授乳時(妊娠前)のレベルに近づくとされています。
授乳を続けていると、そのたびにプロラクチンが分泌されます。そのため、授乳回数が多いほどベース値の低下はゆるやかになります。
産後早期の授乳刺激が重要な理由
母乳を増やすために重要なのは、「血中プロラクチン濃度のベース値が高いうちに、どれだけ授乳刺激があったか」です。
具体的には、産後なるべく早いうちから授乳または搾乳を 1日8回以上 行うこと。これにより、母乳を作る能力が高まっていきます。
・産後早期から頻回授乳を行う
↓
・「母乳を作る細胞ひとつひとつの能力」が上がる
↓
・赤ちゃんに必要な量の母乳が出せるようになっていく
新生児は一度にたくさんの量を飲むことが難しく、何度も母乳を欲しがります。それに合わせて授乳していくことは、母乳分泌を軌道に乗せるという意味でも理にかなっています。
逆にいうと、血中プロラクチン濃度が大幅に下がった段階から頻回授乳を始めても、母乳量が若干増えることはあっても、大きく増やすことは難しいと言えます。
なぜ産後早期の刺激がこれほど影響するのか、その詳しいメカニズムはまだ完全には解明されていません。しかし、「最初の刺激の量が、その後の母乳を作る能力のベースを決める」という現象は、私が臨床で見ている多くのケースとも非常に一致しています。
産後2〜3ヶ月以降は分泌維持が中心になる
ここまで見てきたように、産後早期の授乳の程度によって「どれくらい母乳を作ることができるか」のおおよそのベースラインが形成されます。
私自身の臨床経験では、産後2〜3ヶ月頃には、ベースラインがほぼ固まっていると感じています。
そのため、この時期以降は「頻回授乳して母乳をどんどん増やす」というより、「現在の分泌能力を維持していく」段階になります。
もちろん、まったく母乳が増えなくなるわけではありませんが、産後早期に比べると相当な根気と努力が必要で、難しい傾向にあります。
多くの助産師が「母乳を増やしたいなら産後なるべく早く相談して」と言うのは、このような理由があるからです。
授乳方法について気になることがある場合は、なるべく早く助産師へ相談することをおすすめします。お住まいの地域の「助産院」や「母乳外来」で検索すると、相談先が見つかります。
お近くに相談先がない方や、相談先に迷う場合は、ソラチ助産院でも来院・オンライン相談を行っています。
まとめ
この記事では、以下2点について詳しく説明してきました。
- プロラクチンの分泌量は時間の経過とともに減っていく
- 産後なるべく早期から頻回に授乳をすることで、母乳を作る能力は高まっていく
産後早期は赤ちゃんの欲求に合わせてできる限り頻回授乳を行い、その後は徐々にリズムを意識した授乳へと移行していくことが自然な流れです。
この記事ではプロラクチンによる母乳分泌の仕組みを見てきましたが、母乳はプロラクチンだけでは説明できません。「作られた母乳をしっかり体の外へ出すこと」も重要です。
その仕組みについては、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:【オートクリンコントロールとは|母乳を増やすための基礎知識②】
参考文献
[1]水野克己『よくわかる母乳育児 改訂第3版』へるす出版、2023年、p.36
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