搾乳10分で何ml?|多い・少ないの考え方

「搾乳は何分でどれくらい取れるのが普通なの?」
「そもそも搾乳ってどれくらい取ればいいの?」

そう思っている方に向けて、搾乳量の目安や考え方について助産師の私が解説します。

搾乳量は、搾乳する目的赤ちゃんの月齢によって目標値が変わります。この記事を参考に、自分にとってベストな搾乳量を考えてもらえればと思います。

目次

そもそも10分でどれくらい取れるものなの?

まず結論として、「10分でどれくらい取れたら多い・少ない」という一律の基準はありません。

搾乳量は、産後何日目なのか、赤ちゃんがどのくらい母乳を必要としているか、前回の授乳や搾乳からどのくらい時間が空いているかなど、そのときの条件によって都度変わります。

が、前回の授乳や搾乳から3時間程度空いた状態で両胸それぞれ10分ずつ搾乳したとして、ミルク缶に書かれた月齢相当の量(下図参照)が取れているとしたら、母乳分泌は十分あるといえます。十分どころか、やや多いくらいです。

ミルクを1回にどれくらい作ればいいかの目安
明治「ほほえみ」公式情報をもとに筆者作成

【私の臨床経験から】

新生児〜生後2ヶ月頃までの赤ちゃんは、おっぱいから必要な量を飲み取るのに片胸10〜15分ほど、両胸合わせると30分以上かかることは珍しくありません。赤ちゃんによってはもっと時間がかかることもあります。

さらに、ミルク缶に書かれている量は、完全ミルク育児の赤ちゃんが飲む「最大量の目安」のようなものです。

直接授乳に比べると搾乳器(あるいは手搾り)では母乳を引き出しにくいこと、そしてミルク缶の基準自体が多めであることを考えると、搾乳のわずか20分(片胸10分ずつ)でその量を搾りきれるというのは、かなりしっかり母乳が出ているケースだと考えられます。

わかりやすい目安として調乳量の表を載せていますが、母乳育児において全員この量を目指して搾乳する必要があるかというと、それは違います。

必要な搾乳量は「何のために搾乳するのか」によって変わります。

搾乳が必要なのはどんなとき?

搾乳が必要になる理由は人によってさまざまです。大きく分けると次の3つがあります。

① 赤ちゃんが直接飲めない/飲ませられないとき

NICUなどに赤ちゃんが入院している、乳頭混乱(おっぱいを嫌がって哺乳瓶の乳首ばかり好む状態)で直接飲んでくれない、薬の内服や乳首の痛みなどで授乳できない、母親が一人で外出する、など。

赤ちゃんが直接飲めない分を搾乳で補いたい場合です。

② 母乳を増やしたいとき

母乳の分泌量を増やしたい場合に、赤ちゃんに飲んでもらうことに加えて搾乳を取り入れるパターンです。

③ 赤ちゃんは飲んでいるけれど、一時的に搾乳するとき

いざという時のために母乳をストックしておきたい、赤ちゃんがいつもより長く寝て胸が張ってしまった、しこりが気になるなど、直接授乳はできているけれど一時的に搾乳もする場合です。

目的によって目指すべき搾乳量は変わるため、まずは自分がどの目的で搾乳したいのかを考えてみましょう。

実際にどれくらい搾ればいい?

① 赤ちゃんが直接飲めない/飲ませられないとき

赤ちゃんがおっぱいから直接母乳を飲めない場合は、赤ちゃんの1日の哺乳量を基準に搾乳量を考えます。

赤ちゃんの哺乳量は体重に応じて増えていきます。私が臨床で使っている基準は以下です。

1日必要量の目安は、体重1kgあたり150〜200ml

ただし、体重に比例してどこまでも必要量が増えるわけではなく、1日1000ml程度が上限です。また、全員が1000mlまで飲めるようになるかというとそんなことはなく、800〜850ml程度で落ち着く赤ちゃんもいます。

実際に体重を当てはめて計算してみましょう。

[体重4kgの赤ちゃんの場合]

4kg×150〜200ml=600〜800ml
→1日600〜800mlを目安に、食欲に合わせて与えます。

[体重6.5kgの赤ちゃんの場合]

6.5kg×150〜200ml=975〜1300ml
→計算上は975〜1300mlですが、1日1000ml程度が上限です。赤ちゃんの食欲に合わせて最大1000ml程度までを目安に与えます。

1日の必要量がわかったら、あとはこれを何回に分けて搾るかです。

一番わかりやすいのは、赤ちゃんが1日に飲む回数を基準に1回あたりの搾乳量を考える方法です。

[4kgの赤ちゃんが1日600〜800mlを7回に分けて飲むなら]

600〜800ml÷7回=86〜114ml
→1回86〜114ml程度を7回搾乳すると、1日の必要量をおおむねまかなえます。

※搾乳回数は必ず7回でなくてもかまいません。6回なら1回あたり約100〜133ml、8回なら約75〜100mlというように、回数に合わせて1回の搾乳量を考えればOKです。さらに、毎回の搾乳量は変動があるので、1日トータルで辻褄が合っていれば問題ありません。

② 母乳を増やしたいとき

今の母乳量では足りずミルクを追加している場合は、足しているミルク量を目指して搾乳していきます。

母乳を増やしたいと言いつつも、「搾乳すると母乳が作られすぎるとネットで見たので、怖くてあまり搾っていません」という方もいますが、母乳不足でミルクを足している状態(混合育児)であれば、基本的には心配無用です。

赤ちゃんが飲みきれないほどの量を毎日毎日搾り続けてしまうと分泌過多になりますが、母乳が足りなくてミルクを足しているなら、少なくとも、そのミルク分は母乳が増えても問題ないわけです。

ただし授乳後に搾乳する場合は、すでに赤ちゃんが飲んだあとなので1回に搾れる量は少なくなりがちです。それでも、できるだけ搾ることで母乳は増えていくため、取れた量に一喜一憂せずコツコツ搾乳を続けましょう。

母乳が増える仕組みについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

あわせて読みたい
母乳育児の大前提|母乳はどう増え、どう減るのか。 なぜ仕組みを知る必要があるのか 母乳をもっと増やしたい 胸が張ってつらい 混合にしたい 断乳や卒乳はどう進めればいいのだろう 授乳について調べると、たくさんの方法...

③ 赤ちゃんは飲んでいるけれど、一時的に搾乳するとき

状態に応じて、必要な分だけ搾乳します。

  • 母乳をストックしておきたいなら、必要な量を(1回で取れなければ何回かに分けて取ればOK)
  • 赤ちゃんがいつもより長く寝て授乳間隔が空き胸が張っているなら、張りが軽くなる程度まで
  • しこりが気になる場合は「○ml搾る」と量を決めるのではなく、乳房の状態をみながら症状が軽くなる程度まで

母乳だけで赤ちゃんの体重が順調に増えているなら、「胸が張るから」「しこりができるから」と頻繁に搾乳をすると分泌過多になる恐れがあります。不快な症状が続く場合は自己判断で搾乳を続けず、助産院や母乳外来に相談しましょう。

搾乳時間は何分くらいが適切?「自分に合う時間」の決め方

「搾乳は1回に何分くらいすればいいの?」という疑問もよく耳にしますが、これも一律に「〇分が正解」という基準はありません。

適切な搾乳時間は、「搾乳する目的」「目標の量」「母親の体力的・精神的な労力」の3つを総合して決まるものだからです。

以下のように、状況によってかけるべき時間は変わります。

しっかり量を確保したいとき]
目標の量を搾りきるために、30分近くじっくり時間をかけることが必要な場合もあります。

胸の張りをとりたい、一時的なストックがほしいとき
「張りが楽になるまで」「あと30mlだけ足したい」という目的であれば、その状態になった時点で搾乳は終了です。人によっては5分や10分といった短い時間でその目的が達成できることもあります。

時間ではなく「目的と労力のバランス」で考えよう

「20分経ったから、まだおっぱいが張っているけれど絶対にやめなきゃいけない」ということはありませんし、逆に「15分は続けなさいと言われたから、もう出ないのに搾り続けなきゃいけない」ということもありません。

そして、「ここでやめたら母乳が増えない、どうしよう…」と、目標に縛られて1日中搾乳に追われ精神的につらくなるようなら、それも良いことではありません。

大切なのは、「今の自分の目的が達成できているか」、そして何より「それを続けるための労力が負担になりすぎていないか」です。

育児の中で搾乳に割ける時間や体力は人それぞれです。「何分で何ml」という数字に縛られず、ご自身の目的と体調に合わせて、無理のないバランスを見つけていきましょう。

「本当に出ないの?」それとも「あるけれど搾れないだけ?」

ここまで搾乳量の目安をお伝えしてきましたが、もし「目標の量に全然届かない」「数滴しか出ない」という場合でも、一人で落ち込まないでください。

なぜなら、「本当に母乳の分泌が少ない」のか、それとも「おっぱいの中に母乳はあるけれど搾乳がうまくいっていなくて取れないだけ」なのかは、自分自身では判断がつかないからです。

実際の乳房の状態だけでなく、赤ちゃんの体重や授乳の様子、搾乳の状況などを総合してみることで、現状の栄養が足りているのか、ミルクの量が多いのか少ないのか、もう少し搾乳できそうなのか、といったことはある程度判断できます。

もし数字を見て不安になったり、搾乳がうまくいかなくて悲しくなったりしたときは、近くの助産院や母乳外来を受診してみてください。


OFUSEで応援を送る
この記事をシェアする
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

北川 真貴のアバター 北川 真貴 ソラチ助産院代表

助産師歴 21年 |授乳・睡眠・だっこ・整体・アーユルヴェーダ|
焦らず、比べず、正解や効率に振り回されない、やわらかい育児を発信。

目次