「頻繁に欲しがるけど母乳は足りてる?」
「吐き戻しが多いから飲み過ぎなの?」
「このミルク量で合ってるのかな?」
授乳に関する相談の中で最も多いのが、「適正な哺乳量がわからない」というお悩みです。
哺乳量は赤ちゃんの成長にとって重要ですが、必要量には個人差があるため、「我が子にとっての適量」を判断するのは難しいのではないでしょうか。
しかし、赤ちゃんの哺乳量は、毎回細かく計らなくても推測可能です。
この記事では、助産師である私が普段どのように授乳の過不足を判断しているかを、実際の視点から解説していきます。
哺乳量の見立てには「共通の軸」がある
私が相談を受けた際、実際には多くの情報を同時に見ながら評価しています。例えば授乳の回数や時間、飲み方、月齢、病気が隠れていないか、親の状態などです。
ただその中でも、どのケースでも共通しており、誰にでも評価できる分かりやすいポイントがあります。
それが次の3つです。
- 体重
- 活気(元気にしているか)
- 尿量(おしっこの回数や量)
まず体重を知る
哺乳量を考えるとき私が最も重視しているのは「体重」です。
理由は以下です。
- 数字として評価できる
- 経験や主観に左右されにくい
- 客観的に状態を把握しやすい
実際、病院や健診でも、身体発育と栄養状態の客観的評価には、正確で再現性の良い身体計測の結果(身長や体重など)を、年月齢別の基準と比較するという方法が取られます。[1]
(※専門家もそれだけ体重のデータを信頼しているということです。)
つまり体重は、「どれくらい飲めているか」を「結果」として示す指標なのです。
逆に、授乳回数や時間、吐き戻しだけでは、哺乳量の過不足は判断できません。状況を正しく理解するために、まずは体重を確認することから始めます。
体重は「点」ではなく「線」で見る
体重はとても役立つ指標ですが、数値の見方には注意が必要です。
例えば「5kgだった」という情報だけでは、その体重が順調なのか、増え方が足りないのか、多いのかは判断できません。
前回と比べてどのくらい増えたかを見ることで、はじめて哺乳量が適切かどうかを評価できます。
体重は「日割りの体重増加量」や「成長曲線での推移」をもとに評価します。
毎日測ること自体は問題ありませんが、1日単位の増減で評価すると判断を誤ります。一定期間の推移を見て判断することが大切です。
体重の評価方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

体重の推移で「次の一手」が見えてくる
体重の推移を見ることで、哺乳量が適量かを判断します。その結果をもとに、次に取るべき対応を考えていきます。
- 体重増加が適正 = 哺乳量は適正と考える
- 体重増加が少ない = 哺乳量不足の可能性を考える
- 体重増加が多い = 哺乳量が多い可能性を考える
よくある「吐き戻しが多い」という相談を例に、具体的な考え方を見てみましょう。
× NGパターン
1. 吐き戻しが多い
↓
2. 「飲み過ぎだ!ミルクを減らそう!」とすぐに結論を出す
◎ OKパターン
1. 吐き戻しが多い
↓
2. まずは「体重増加量」を確認する
↓
・多い場合:哺乳量が多く、吐き戻しにつながっている可能性を考える
・適正な場合 :哺乳量は適正と考えて、生理的な吐き戻しの可能性を考える
・少ない場合 :哺乳量不足や、吐き戻しが成長に影響していないかを確認する
↓
3. 原因に合わせた対策を取りつつ、1〜2週間後に体重を測って再評価する
このように、同じ「吐き戻し」という症状でも、体重の推移によって原因や対応は変わってきます。
体重の推移を見ながら評価と修正を重ねていくことで、判断のブレを減らし、その子にとってのベストな状態に近づけていくことができます。
体重とあわせて確認する「2つのサイン」
ここまで体重を中心に説明してきましたが、実際には体重だけでなく、「活気」と「尿量」もあわせて確認します。
[活気]
赤ちゃんの全身状態を反映します。ぐったりしていたり、あやしても反応が乏しい場合は注意が必要です。
[尿量]
飲めている量を反映します。おしっこの回数や量が極端に少ない場合は、哺乳量不足の可能性を考えます。
逆に、
- 体重が増えている
- 活気がある
- 尿量も問題ない
この3つがそろっていれば、少なくとも現時点では哺乳量は足りている可能性が高いと考えられます。
まとめ:観察し、試し、見直すという育児へ
ここまで話してきた通り、哺乳量の判断は体重・活気・尿量の3つを中心に行います。
とくに体重は単発の数値ではなく「推移」で見ることが重要で、そこに全身状態と排泄状況を合わせることで、哺乳量の過不足は立体的に判断できます。
症状だけで結論を出さず、必ずこの3つの軸に立ち返って仮説を立てること。そのうえで必要な対応を行い、再度評価する。
この「仮説→実践→評価」を繰り返すことが、ブレない見立ての基本になります。
そしてこの考え方は、実際の医療現場だけでなく家庭の育児にもそのまま応用できます。
限られた情報の中でも「見る軸」をもち、試して、見直していくことで、不安は整理されていきます。
完璧な判断を一度で出すことではなく、観察と調整を重ねながら、自分たちにとってちょうどいい状態に近づけていくことが大切です。
参考文献
[1]横山徹爾(研究代表者). 『乳幼児身体発育曲線の活用・実践ガイド』. 令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業「乳幼児の身体発育及び健康度に関する調査実施手法及び評価に関する研究(H30-健やか-指定-001)」. 2021年3月.p6
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